Vol3.ロボット手術。小さなキズで、その後の負担を軽く
・当院外科の強みの1つ、ロボット手術とは。
消化器領域におけるロボット手術について、どのような強みがあるか、外科代表部長の石榑医師にお話を伺いました。
Q1.外科ではどのような診療に力をいれて取り組んでいますか?
手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った体への負担が少ないロボット手術に力を入れています。ロボット手術は腹腔鏡手術を進化させた手術で、当院は2022年に導入してから、外科領域だけで毎年50例を超えるロボット手術を行っています。
Q2.手術ではメスでお腹を切るイメージがありますが、ロボット手術にはどのような特徴がありますか?
従来のお腹を大きく開けて行う「開腹手術」から、傷を小さくする「腹腔鏡手術」が普及し、さらに発展させたのが「ロボット手術」です。
腹腔鏡手術とロボット手術の1番の違いは「関節」がある点です。腹腔鏡手術は長い棒状の鉗子という器具を操作するのに対し、ロボット手術は指先のような関節があることで、自由に曲げたり回したりすることができます。また、手ブレ補正機能も備えており、従来の腹腔鏡手術では操作が難しかった、体の奥の方にある部位や狭い場所であっても自在に繊細な操作を行うことができます。3D立体視や拡大視効果を備えたカメラ性能も優れており、従来の手術に比べて精度の高い正確な手術が可能になりました。
Q3.傷が小さくなることは見た目以外にも患者さんにメリットがありますか?
ロボット手術であっても腹腔内の病変部を切り取る範囲に大きな差はありませんが、病変部にアプローチするための傷は小さいほど良いと考えています。
実際に、傷の小さい患者さんの方が手術後の回復が早い傾向が見られます。手術の翌日にはベッドから起き上がり、3日目には食事も少しずつ摂れるようになります。術後経過が順調な方であれば、1~2週間ほどで食事やトイレ、シャワーなど身の回りの生活が独りで可能になるくらい元気に回復されます。
Q4.ロボット手術を受けることができる症例は何ですか?
現在のところ、当院では「胃がん」と「大腸がん」を消化器領域のロボット手術の対象としています。いずれも日本の保険診療で認められており、健康保険の範囲内で手術を受けることができます。 ただし、胃がんや大腸がんであっても全ての患者さんにロボット手術が適用されるわけではありません。例えば、がんがかなり進行し、他の臓器に広がっているような場合や肥満体型、心肺機能が悪い方、その他合併症のある方などには適用を慎重に検討します。そのような症例には安全面を優先して、術中所見や術中に偶発的に発生する事態に対して柔軟に対応できる従来型の開腹手術を選択することもあります。
ドクターメッセージ
高度な医療と、日常の外科疾患や救急疾患に幅広く対応し、地域の医療を支え続けていきます。
医療技術の進歩により、低侵襲で安全性の高いロボット手術が可能となってきました。日本でのロボット手術の保険適応は徐々に広がりつつあり、今後より多くの患者さんに提供できるようになることを期待しています。当院でも、時代の流れに沿い、ロボット手術の提供体制をさらに拡充していきたいと考えています。
なお、当院では消化器がん診療や高度な手術だけでなく、虫垂炎やヘルニア、胆石胆のう炎など腹部領域の救急疾患に対する手術にも幅広く対応していますので、お気軽にご相談ください。
外科代表部長 石榑 清
関連リンク
江南厚生病院 外科