外科

診療科概要
がん診療から日常診療にいたるまで最新のガイドラインに準拠した質の高い”安心安全な”手術治療を提供できるよう努めています。
当科は日本外科学会、日本消化器外科学会、日本乳癌学会の認定施設であると同時に、名古屋大学消化器外科を中心とした中部臨床腫瘍研究機構(CCOG)の主要な関連施設でもあり、がん治療に関する臨床研究にも積極的に参加しています。
がん診療に関しては、胃がん、大腸がんをはじめ、乳がん、肝臓がん、膵がん、胆道がん、肺がんを主な対象とし、手術療法と化学療法の両面から診療に取り組んでいます。昨年度の手術件数は939例で、全身麻酔715例、その内悪性腫瘍の手術は394例(胃がん62例、大腸がん130例、乳がん89例、肺がん36例、ほか77例)でした。
また、手術だけでなく抗がん剤治療や緩和医療にいたるまで、外来化学療法室や緩和ケアチーム、がん相談支援センターとも連携をはかりつつ、患者さん中心のチーム医療に努めています。
近年では術後早期回復プロトコール(ERAS)を積極的に取り入れています。周術期の絶食期間の短縮、積極的な疼痛対策、早期離床とリハビリ、周術期口腔ケアの導入など、手術を受けられた患者さんが少しでも早く回復し社会復帰できるよう様々な対策をしています。
専門分野
- 5大がん(胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん、肺がん)に対する手術と化学療法
- 肝胆膵疾患:膵癌、胆道癌
- 内分泌疾患:甲状腺、副甲状腺、副腎
- 腹腔鏡下手術:腹腔鏡下幽門側胃切除術、腹腔鏡下結腸切除術
- 救急外科:腹膜炎手術、外傷症例
- 一般外科:鼠径ヘルニア、痔疾患、その他
胃がん
早期胃がんの一部は内視鏡的治療(EMR:内視鏡的粘膜剥離術やESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)の適応になりますが、内視鏡的切除が困難な病変や遺残再発リスクのある症例に対しては外科的手術が必要です。こうした早期胃がんに対して、当科では腹腔鏡下胃切除術を積極的に行っています。腹腔鏡手術では創が小さく術後疼痛が少ないため、入院期間の短縮や早期の社会復帰が可能とされています。また、術後の整容面でも優れています。
一方、進行胃がんに対してはガイドライン上、”腹腔鏡手術の有効性と安全性は十分に確認されていない”とされており、従来通りの開腹手術で根治を目指したリンパ節郭清をしっかり行います。
大腸がん
大腸がんでは腫瘍がどの部位にあるかによって切除範囲が決定され、術式も回盲部切除術、右結腸切除術、横行結腸切除術、左結腸切除術、S状結腸切除術、直腸低位(高位)前方切除術、腹会陰式直腸切断術などがあります。腫瘍が肛門にきわめて近い場合や腸閉塞など術前の全身状態によっては一時的/永久的ストーマ(人工肛門)が必要になることもあります。結腸がんでは進行がんに対しても腹腔鏡手術の適応を拡大して行っています。
大腸がん領域では多くの抗がん剤や分子標的薬が次々と新規に登場し化学療法が急速に進歩しています。一部の高度進行例に対しては術前化学療法を導入して腫瘍を縮小させることにより、過大な他臓器合併切除を回避して機能温存が可能になります。
肝胆膵領域がん
この領域は解剖が複雑で診断や手術が難しいのが特徴です。また、外科的切除以外に有効な治療法がない一方で、手術だけでは治療成績に限界があるのも現状です。この領域でも新規抗がん剤治療の登場により、化学療法と放射線治療、手術治療を集学的に行うことが注目されています。
大腸がんの肝転移では、これまでは診断された時点で2~3割程度の患者さんしか外科的切除ができないとされてきました。そのような高度進行例であっても強力な化学療法を術前導入し、術前門脈塞栓術や二期的肝切除などの外科的手技(コンバージョン手術)を組み合わせることによって非常によい治療成績を得られるようになってきました。
乳がん
乳がんの領域は、科学的な根拠に基づいて各種の診療ガイドラインが確立しており、当科では、そのようなガイドラインに基づいた最適な治療法を患者さんとよく相談して決めていきます。手術に関しては、乳房全切除術だけでなく、術前MRIによる拡がり診断などを総合的に評価して、整容性を保つために乳房部分切除術も行っています。さらに、術後のリンパ浮腫などの合併症の予防をするために、センチネルリンパ節生検を行い、転移がない症例や、転移がある症例の一部に対しても腋窩リンパ節郭清の省略を行っています。入院期間は術式によって異なりますが、術後4~7日程で退院していただけます。また、乳がんは組織診断によっていくつかのサブタイプに分類され、それぞれ治療法が異なります。サブタイプによっては術前の薬物療法を行っています。
尚、診断や治療の方針の決定などは乳腺専門医が行っておりますが、外科医師の協力のもとに、診療を行っております。
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ヘルニア
従来より頻度が高い疾患ですが、最近では腹臥位CT診断により正確にヘルニア門の位置を術前診断し、腹腔鏡下ヘルニア復術(TAPP法)を行っています。従来法(メッシュプラグ法)に比べて異物感が少ないため、とくに社会活動性の高い患者さんに推奨されます。
救急医療
これまで虫垂炎や穿孔性腹膜炎など腹部救急疾患を中心に緊急対応してきましたが、3次救急指定病院の認定をうけ高エネルギー外傷や多発外傷症例も増えてきました。今後も救急救命センターや他科と連携してさらにいっそう地域救急医療のニーズに応えていきます。
専門外来
- 呼吸器外科外来:肺、縦隔疾患の手術適応症例を対象とし、毎週木曜日に非常勤医師が予約診療しています。
- スキンケア相談室 : 皮膚・排泄ケア認定看護師3名が毎日予約診療にあたっています。 オストメイトの術前オリエンテーションから術後ケア、褥瘡や皮膚障害、排泄ケアなども行っています。
- リンパ浮腫外来: 毎週火曜日にリンパドレナージセラピストの資格を得た看護師が予約診察します。乳がんや婦人科がん、前立腺がんなどの手術や放射線治療後に発症するリンパ浮腫やがんの進行に伴う浮腫に対して、複合的理学療法を行っています。